ガソリン車廃止と石油化学について

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 先日、2030年代前半でガソリン車、というか内燃機関車の販売を廃止する方針というニュースが出ていました。これは車業界や石油業界だけでなく、化学業界にもインパクトの大きいニュースと僕は考えています。

政府が「2030年ガソリン車禁止」を打ち出した訳 | 電動化
-2030年前半、ガソリン車販売禁止-日本人にとって衝撃的なニュースが、2020年12月3日に流れた。これは、政府が進める「2050年カーボンニュートラル」の一環だ。しかし、これは政府が正式に発表したものではなく…

 ガソリン車が廃止になればもちろんガソリンが燃料として出回ることはなくなるでしょう。ガソリンを製造・販売している石油会社に大きいインパクトがあるのはわかります。しかし、この方針が石油会社だけでなく、化学メーカーにもなぜ影響するか?という内容で僕なりの見解を記事にしてみようと思います。ものすごく大雑把に言うと、ガソリン需要無くなる→石油からガソリン作る必要が無くなり、ガソリンと同時に精製しているナフサの量が減る→ナフサから様々な化成品を作る下流の業界に影響する、というロジックです。(この記事では車の動力が今後どうなるか?という内容には触れません。あくまで石油化学について着目します。)

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そもそもガソリンって何?

 本題に入る前に前提となる情報を整理します。まず、ガソリンはどんなもので、どうやって作られているか。もちろん燃料となるものなのでいわゆる炭化水素で、炭素の数は4~10程度です。製造プロセスは下の画像参照。プロセス中の個々のユニットにはこの記事では触れません。ボリュームがとんでもないことになるので。重要なのは右上で、「ガソリン・ナフサ・芳香族」の混合物から石油化学原料と乗用車ガソリンが製造されているということです。この石油化学原料が膨大な数の誘導品・化成品となり、様々な工程を経て、様々な形で僕らのような一般消費者に届きます。こうして改めて石油精製プロセスを見ると、原油を余すことなく利用していますね。この図では重油は燃料にしか利用されていないように見えますが、実際には原料としても利用する化成品もあります。

 石油精製プロセスについて詳しく知りたい!という方は石油学会や石油会社のHP等ネットで色々情報が出てくるので調べてみてください。もっと詳しく知りたい!石油オタクになりたい!という勉強熱心な人はこれらの本をぜひ。学生の頃所属していた研究室に2冊とも置いてあったので読みましたが、かなり詳しく書かれていましたので参考になると思います。

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石油化学(ナフサ)から何ができるか

 石油の精製によってナフサが作られていることが上記からわかりました。それでは、ナフサから下流はどうなっているか確認します。石油化学工業によってどんな化成品が製造されているかをざっくり示したのが以下の画像です。ナフサから数多くの物質が作られ、様々な製品の原料となって世の中に出回っていることがわかります。

出光興産HPより引用

 要は、日常で触れる多くの製品は元をたどれば石油化学由来だということ、その原料はナフサであり、それはガソリンの製造と同時に作られている、ということです。そのため、ガソリンの需要・流通量が減るということは、ガソリンと同時に作られるナフサも影響を受け、その下流である石油化学工業全体が影響を受ける、ということが考えられるわけです。ガソリンの需要が減り、上流である石油精製に活力がなくなれば下流の製品価格にも影響するかもしれません。
 上流の石油精製と併せて石油化学にも詳しくなりたい!という方はこちらの本をぜひ。

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石油・化学業界はどうするか

 元々、石油会社はガソリンの需要が徐々に減っていく、ということはずっと前からもちろんわかっていました。自動車会社は昔から今に至るまで常に低燃費を追究してきており、20000年代にはハイブリッド車が一般的となり、今では燃料電池車や電気自動車が街を走っています。このガソリンの需要が減っていく流れを止めることはできません。そして最近では、テスラの台頭、EUの脱化石燃料への取り組み等々世界的な脱化石燃料の流れが一気に進みました。(今回の方針発表は、この流れに乗り遅れるわけにはいかないため宣言したのではと思っています。)
 これまで、石油会社は石油精製をしながら違うメシの種を見つける、という方針だったはずですし、実際様々な取り組みをされていましたが、それをより加速させる必要が出てきました。(ほんの一例ですが、ENEOS(旧JX)は原油から石油化学まで事業を拡げ、石油化学製品やそれから派生した高付加価値な素材を提供する、化学メーカーに似たようなことをしています。)
参照:https://newswitch.jp/p/23613 https://www.chemicaldaily.co.jp/%E4%B8%89%E8%8F%B1%E3%82%B1%E3%83%9F%E3%82%AB%E3%83%AB%E3%80%81%EF%BD%85%EF%BD%8E%EF%BD%85%EF%BD%8F%EF%BD%93%E3%81%A8%E7%9F%B3%E5%8C%96%E7%B5%B1%E5%90%88%E3%80%81%E5%90%88%E5%BC%81%E8%A8%AD%E7%AB%8B/

 そして化学メーカーは、ガソリンの需要が今後さらに落ち込めば、ナフサの量が減り価格が上がる中を生き延びていかなければなりません。かつ、SDGs(Sustainable Development Goals)というトレンドに乗っかるような製品や製造プロセスの開発をしていかなければならないという厳しい状況にあります。しかし、こういった厳しい状況をブレイクスルーしていくため企業や業界を超えた動きが出ていますし今後も出てくると思います。
参照https://www.chemicaldaily.co.jp/%e4%bd%8f%e5%8f%8b%e5%8c%96%e5%ad%a6%e3%80%81%e3%82%a8%e3%82%bf%e3%83%8e%e3%83%bc%e3%83%ab%e3%82%92%e3%82%a8%e3%83%81%e3%83%ac%e3%83%b3%e3%81%ab%e5%a4%89%e3%81%88%e3%82%8b%e6%8a%80%e8%a1%93%e3%80%81/
https://global.toyota/jp/newsroom/corporate/31850131.html

最後に

 今後、石油や鉄鋼、自動車など、大量の二酸化炭素を排出する業界がトレンドに合わせどんな動きをするか要チェックです!

 ご安全に!

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