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【機械】フレームアレスター解説:爆発から命と設備を守る知られざるヒーロー

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保安技術
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工場やプラント、ガソリンスタンド、はたまた一般家庭の暖房器具に至るまで、可燃性のガスや蒸気は至る所に存在します。もしこれらが何かの拍子で引火してしまったら…フレームアレスターは、そんな恐ろしい事態を防ぐための、まさに「縁の下の力持ち」なのです。

この記事では、そんなフレームアレスターについて、初心者の方でも納得できるように、その原理から構造、そして安全性に不可欠な「消炎直径」や「安全すきま」といった専門用語まで、解説していきます。

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概要

フレームアレスターは、その名の通り、「火炎(フレーム)」を「阻止(アレスト)」する装置です。具体的には、可燃性のガスや蒸気が存在する配管や容器内で発生した火炎が、外部に伝播して爆発を引き起こすのを防ぐための安全装置です。火炎がフレームアレスターを通過しようとすると、その構造によって火炎のエネルギーが奪われ、火炎は消滅してしまうのです。これによって、火炎が危険な場所に到達するのを食い止め、爆発事故を未然に防ぐことができるのです。

原理・構造

さて、フレームアレスターが火炎の伝播を防ぐ重要な装置であることは理解いただけたかと思います。では、一体どのような「原理」で、火炎はフレームアレスターを通過できないのでしょうか?ここが、フレームアレスターの最も面白い部分で、一言でまとめると、熱の除去です。

火炎が燃焼を継続するためには、一定以上の温度(発火温度)を保ち続ける必要があります。フレームアレスターの主要な原理は、この「火炎から熱を奪う」ことによって、火炎が燃焼を継続できなくさせるというものです。

フレームアレスターの内部には、エレメントがあり、これには非常に狭い間隔で多数の流路(細い隙間や穴)が設けられています。火炎がこの狭い流路を通過しようとすると、火炎の持つ熱エネルギーが、流路を構成する壁面に急速に奪われます。

例えるなら、熱いお湯を細いストローで吸い込もうとすると、ストローの壁に熱が奪われてお湯が冷めてしまうようなものです。火炎も同じで、狭い流路を通ることで、火炎の温度が急激に低下し、発火温度を下回ってしまいます。こうなると、燃料と酸素があっても燃焼を継続することができなくなり、火炎は「鎮火」してしまうのです。
実験動画を貼っておきますので、よかったら見てください。動画では、フレームアレスターに使われるエレメントのメッシュを細かくしたときの変化を見ていますが、かなりわかりやすいです。

消炎直径

フレームアレスターの性能を語る上で、絶対に欠かせないのが「消炎直径」と「安全すきま」という概念です。これらは、フレームアレスターが火炎を確実に阻止できるかどうかを決定づける、極めて重要な要素です。

まずは消炎直径について解説します。これは、正式には「最大実験安全すきま(Maximum Experimental Safe Gap: MESG)」と呼ばれます。簡単に言うと、MESGとは「ある特定の可燃性ガスまたは蒸気において、火炎が最も狭い隙間(ギャップ)を通過できる最大の直径(すきま)」を意味します。

もう少し具体的に説明します。 様々な種類の可燃性ガスや蒸気は、それぞれ異なる燃焼特性を持っています。例えば、水素は非常に爆発しやすい性質を持っていますし、メタンは比較的穏やかです。この「爆発しやすさ」は、火炎がどれくらいの小さな隙間までなら通過できるか、という形で現れます。

MESGの測定は、実際に爆発性混合気(ガスと空気の混合気)を試験装置の中で着火させ、異なる直径の隙間を通して火炎が伝播するかどうかを実験的に確認することで行われます。この試験は、国際的に統一された規格(例えば、IEC 60079-20-1)に基づいて厳密に実施されます。その実験結果を基に、各ガス固有のMESGが決定されます。

MESGの値が小さいほど、そのガスはより爆発しやすい(つまり、より小さな隙間でも火炎が通過できる)ということを意味します。例えば、MESGが0.5mmのガスと、MESGが1.0mmのガスがあった場合、0.5mmのガスの方がより危険性が高く、それを阻止するためにはより精密なフレームアレスターが必要になります。

安全すきま

MESGが「ガスの爆発しやすさ」を示す指標であるのに対し、「安全すきま(Quenching Gap)」は、**フレームアレスターの火炎阻止エレメントの「実際の隙間の寸法」**を指します。 つまり、フレームアレスターが火炎を確実に消滅させるためには、フレームアレスターの安全すきまが、対象となるガスのMESGよりも十分に小さくなければならないということです。

例えば、あるガスのMESGが0.9mmだったとします。このガスを使用する設備に設置するフレームアレスターは、火炎阻止エレメントの隙間が0.9mmよりも十分に小さい、例えば0.5mmや0.6mmといった設計になっている必要があります。

この「十分に小さい」という部分が重要です。MESGはあくまで「実験安全」という言葉が示すように、実験的に安全が確認された最大の隙間です。実際の現場では、様々な要因(圧力変動、温度変化、エレメントの汚れ、火炎の加速、複数回の火炎進入など)によって安全すき間が低下する可能性も考慮し、MESGに対して十分な安全マージンを持たせて設計します。また、エレメントは、火炎を阻止する際に自身の温度が大きく上昇するため、その熱容量も重要な設計因子となります。

最後に

ここまで、フレームアレスターの概要、原理、構造、そして安全性に不可欠な消炎直径と安全すきまについて、詳しく解説してきました。今回の記事を通じて、フレームアレスターという装置の重要性、そしてその複雑でありながらも合理的な原理について、皆さんの理解が深まったなら幸いです。

 ご安全に!

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